動物由来感染症
動物由来感染症とは
「動物由来感染症」とは、動物から人間へうつる感染症をあらわす言葉です。感染する病原体となる微生物や寄生虫には様々なものがあり、このうち、日本には寄生虫による疾病を入れても数十種類くらいがあるといわれています。
 ■ 主な動物由来感染症
  □ イヌやネコなどを飼うとき注意する病気
病  名 病 気 の 特 徴
狂犬病 感染した犬、ネコ、アライグマ、キツネ、スカンク、コウモリなどに咬まれたりして、だ液中の狂犬病ウイルスに感染する。すべての哺乳類が感染し、発症すれば致命的である。日本では1957年以降の発生はないが、万一の発生に備え、飼い犬の登録と、年1回のワクチン接種が義務づけられている。
パスツレラ症 パスツレラは、犬やネコの口の中に普通に見られる細菌で、咬まれたり、引っ掻かれたりした場合に人間が感染することがある。通常は咬まれたりした場所が赤くはれたりするだけの軽傷であるが、傷が深い場合には骨髄炎になったりすることもある。
猫ひっかき病 ネコに咬まれたり、引っ掻かれたりして細菌に感染する。1個ないし数個のリンパ節がはれて痛み、数日から数ヶ月続くが、予後は良好である。潜伏期間は数日から2週間。
トキソカラ症 犬、ネコ、アライグマの回虫の卵が、砂場や泥の中に入ったものを子供たちが口に入れると、体内で幼虫になり、筋肉や肝臓、脳や眼に入り込み障害を起こす。犬やネコのふん便の後始末をしっかりすることが大切である。
皮膚糸状菌症 犬やネコの皮膚病のうちで、皮膚糸状菌(白癬菌)によるものは、人に感染することがあります。
エキノコックス症 エキノコックスは成虫の体長が5o前後の微小なサナダムシ(条虫)である。キタキツネや犬の糞に混じったエキノコックス虫卵を手指や、食物や水などを通して口からはいることで感染し、虫卵は腸の中で幼虫になり、その後肝臓に寄生し肝機能障害を起こす。感染後、数年から数十年ほどたって自覚症状が現れる。日本では主に北海道で患者の発生が見られる。
トキソプラズマ症 トキソプラズマという原虫によって起こる。生肉(特に豚肉)やネコの糞から感染する。成人では無症状の場合が多いが、妊娠中に感染すると新生児の水痘症の原因になることがある。また、免疫機能が低下した患者では脳炎などを起こす。
  □ ネズミ、ハムスター、ウサギ、プレーリードッグなどを飼うとき注意する病気
病  名 病 気 の 特 徴
ペスト ペスト菌に感染している、げっ歯類(ネズミなど)の体液が直接またはノミを介して感染する。日本では1926年以来発生はないが、世界的には1990年以降患者は増加している。腺ペスト、肺ペストに大別されるが大部分は腺ペストであり、急激な発熱や、リンパ節が腫れる。
野兎病 病原体は野兎病菌。蚊、サシバエ、マダニなどによる間接、あるいは感染した動物の血液に直接触れたりすることによる感染が多い。感染した野兎の症状は不明だが、人の場合は感染してから3〜4日後、発熱、悪寒、関節痛などになり、菌が侵入したところのリンパ節が腫れる。
腎症候性出血熱 ハンタウイルスによる感染症。ラットなどが感染源となり、実験動物管理上重要である。糞尿中に排出されるウイルスの吸引や咬傷から感染する。げっ歯類には症状は現れないが、人では感染してから10〜30日後、突然の発熱、頭痛、腹痛に続き重症化すると出血傾向が激しくなり、腎不全の兆候を呈す。
レプトスピラ症 原因菌であるレプトスピラは保菌動物の尿中に排泄され、これに汚染された水や土壌などを介して人が感染する。ネズミや犬が保菌していることが多いが、犬などはワクチンで予防できる。人では感染してから3〜14日後、発熱、頭痛、筋肉痛などのが起こり、重症化すると黄疸を示す。
  □ 小鳥やハトなどを飼うとき注意する病気
病  名 病 気 の 特 徴
オウム病 病原体はオウム病クラミジア。鳥(セキセイインコ、オウム、ハトなど)の糞に含まれる菌を吸い込んだり、口移しでエサを与えることによっても感染する。感染してから1〜2週間後、突然の発熱(38度以上)、咳が必ず出て、たんを伴う。激しい頭痛、筋肉痛、全身倦怠、食欲不振などインフルエンザのような症状を示す。そして進行すると肺炎を引き起こす。
クリプトコックス症 ハトの糞から高率に検出される。免疫系の疾患(AIDS、ホジキン病など)を持っている人に発生しやすく、髄膜炎などを起こす。
  □ サルを飼うとき注意する病気
病  名 病 気 の 特 徴
Bウイルス病 Bウイルスに感染した東南アジア産マカカ属のサル(アカゲザル、カニクイザルなど)に咬まれたり、引っ掻かれたりして感染する。1〜2日後、傷口がはれ、水疱を形成し脳炎を起こす。
エボラ出血熱 病原体はエボラウイルス。1976年に初めてスーダンとザイールで流行した極めて重篤な出血熱。自然界から人への感染経路は不明であるが、サルとの接触で感染した例あり。発症は突発的で、重いインフルエンザのような症状で、高熱、頭痛、胸・腹部痛及び出血(吐血、下痢)などがある。
マールブルグ病 病原体はマールブルグウイルス。1967年に初めて西ドイツとユーゴスラビアにおいてアフリカミドリザルからから人が罹患した、極めて重篤な出血熱。自然界から人への感染経路は不明であるが、サル、人から人へは血液、体液などの接触により感染する。潜伏期は3〜10日程度。
細菌性赤痢 赤痢菌によって起こる。主な感染源は人であり、サルは捕獲時に人から経口感染することが知られている。人では、通常、感染から3日以内に発熱、腹痛、下痢などを呈す。サルでは比較的症状は軽い。
結核 結核菌によって起こる。人からサルなどに感染し、再び人に感染する場合や、患者のせきなどとともに排出された結核菌を吸入することにより感染する。せき、痰、微熱などかぜに似た症状が2週間以上続く。
  □ その他、注意をする病気
病  名 病 気 の 特 徴
サルモネラ病 原因菌であるサルモネラ菌には多くの種類があり、自然界のあらゆるところに生息している。感染源として重要なものは、汚染された食肉や鶏卵であるが、幼児においては犬、ネコ、カメなどのペットからの感染も無視できない。嘔吐、下痢、発熱などの食中毒症状を示す。
大腸菌症 ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌が動物由来感染症として重要。牛や羊の糞便、それらに汚染された食品、器具・器材に接触することによって感染する。また、間接的に人の手指を介しての感染も確認されている。
Q熱 野生動物、家畜、ペットなどが感染している場合がある。感染した動物の尿や糞などに含まれる病原体を吸い込んで感染することが最も多い。殺菌されていない牛乳を飲んだりして感染することもある。人ではインフルエンザ様症状で、悪寒を伴う急激な発熱(38〜40℃)が起こり、特に頭痛や筋肉痛が強い。
日本脳炎 日本脳炎ウイルスに感染したコガタアカイエカに吸血されることで感染する。蚊はウイルス血症を起こしている豚を吸血することで感染する。かつては日本の代表的な動物由来感染症であったが、予防接種の普及などで減少した。

公衆衛生分野